介護付き有料老人ホームとは、24時間介護スタッフが常駐し、掃除や洗濯など身の回りの世話や、食事、入浴、排せつなどの介助サービスが受けられる介護施設です。
主に民間企業が運営しており、一定の設備、人員、運営基準のもと都道府県の指定(認可)を受けている施設を指します。高級な施設もあれば低価格が特徴の施設もあり、入居費用の設定はさまざまです。
入居要件も施設により異なり、介護度が軽い方から重い方、寝たきりの方、認知症の症状がある方など幅広く受け入れています。
看取りまで対応しているところが多く、終のすみかの選択として探しておられる方が多い施設種別です。
介護付き有料老人ホームの特徴として、バリエーションの豊富さが挙げられます。
民間企業が主に運営しており、基準を満たしていればどんな体制でも可能なため、入居要件、サービス内容、強みとしている部分がホームによって異なります。
例えば月額費用が100万円を超す高級なものから、入居一時金がかからないプランを持つ施設まであります。
医療体制が充実しているものもあれば、温泉がある施設もあったり、海が見える施設や、ペットと暮らせる施設、認知症の方も入居できる施設もあります。
提供されるサービス
介護付き有料老人ホームで共通して提供されるサービスは以下の通りです。
- 介護
- 生活支援
- 健康管理・医療行為・緊急対応
- 食事
- リハビリテーション
- レクリエーション、イベント
①介護
介護が必要な方に対して、食事・入浴・排せつの介助や機能訓練などを行います。
介護度の重さや認知症の有無などその方の身体状況に応じて、残存能力を引き出す工夫も加えながら、自立支援に向けた介護が提供されます。
②生活支援
居室の清掃や洗濯などの家事サービス、買い物や行政手続きなどの代行サービス、本人不在中の居室の管理、入院中の洗濯物や必要品の購入やお届けなども行います。
③健康管理・医療行為・緊急対応
介護付き有料老人ホームでは、看護師が少なくとも日中は常駐しており、検温、血圧のチェック、服薬管理などの日常の健康管理と、褥瘡(じょくそう)などの皮膚疾患、軽いケガなどの処置を受けることができます。
協力医療機関との提携による定期的な健康診断、訪問診療も行われ、内科や歯科については定期的に医師の診断を受ける機会があります。
また、胃ろうなどの経管栄養、膀胱留置カテーテル・ストーマ(人工肛門)等の管理、在宅酸素の管理などの医療行為も行われます。一方、夜間の痰の吸引や食事前のインシュリン注射などが必要な方は、看護師の勤務時間によって受け入れ可否が決まります。
夜間の緊急時は、看護師が勤務時間外であればオンコール体制を整えるなどの処置を講じ、医療機関に搬送するなどの対応がなされます。
④食事
食事は入居者の健康管理の重要な要素であるとともに、入居者にとっては毎日の楽しみの1つです。
栄養バランスはもちろん、旬の素材を使ったメニューや正月、ひな祭り、クリスマスなどの年中行事によって季節感を出し、楽しんでもらう工夫をしています。
嫌いな食材は好みのものに変えるなど、個別の嗜好にもできる限りの対応をし、嚥下機能に合わせた刻み、トロミなどの形態や、塩分やカロリー制限などの医療食にも対応しています。
また、マグロの解体ショーを見せてお寿司にしてくれたり、お祭りの屋台を再現したりなど、イベントと絡めて日常と違う食事を楽しむ企画を行うホームもあります。
⑤リハビリテーション
現在の身体機能や認知機能を低下させないようなリハビリが行われます。
理学療法士、作業療法士などのリハビリ専門職により、器具を使った歩行訓練や筋力強化、嚥下機能維持・改善の口腔体操などのメニューが実施され、日常生活における自立を促します。
また、脳トレや音楽療法、園芸療法などを取り入れ、認知機能の低下を防止します。
レクリエーションの一環として提供されることもあります。
⑥レクリエーション、イベント
スタッフが企画したゲームや運動、カラオケ、手芸から、専門講師を招いた本格的な教室まで、単調な毎日に彩を与える工夫が行われています。
これらは、身体機能や認知機能低下を目的としている内容もあります。
また、お花見や夏祭り、紅葉狩りに餅つきなど季節を感じるイベントも行われ、ミニ旅行やお買い物ツアーなどが企画されることもあります。
設備
一般的な設備としては以下のものが存在します。
- 個人スペース(居室)
- 共用スペース(食堂、浴室、リビング、医務室・健康管理室、機能訓練室)
- その他設備(看護・介護職員室、厨房、洗濯室、汚物処理室)
また、万が一、火災などが発生した場合に備え、不燃性の建材を使用したり、スプリンクラーを設置するなど、安全面も考慮されています。
職員の種類と人員配置
介護付き有料老人ホームでの職員の配置には、入居者の数及び提供するサービス内容に応じ、 その呼称にかかわらず、次の職員を配置することが定められています。
また、職員は入居者の実態に即し、夜間の介護、緊急時に対応できる数を配置することとされています。
①職員の種類詳細施設長などの管理者
施設経営の責任者として、運営を担います。
高齢者の介護について知識、経験を有する者を配置することが条件となっています。
②生活相談員
入居者や家族から生活上の相談を受けたり、行政的な手続きを行います。
常勤で1人以上の配置が義務付けられています。
③栄養士(管理栄養士)
入居者の健康を維持する献立を考えたり、食材の選定や管理を行います。
④調理員
献立表に基づき、食事の調理を行います。
⑤介護職員及び看護職員などの介護従事者
入居者の身体介護及び看護を行います。
要介護者3人に対して1人以上の配置が義務付けられています。(要支援者に対しては10人に対して1人以上)
⑥機能訓練指導員
理学療法士、作業療法士、言語療法士、看護職員、柔道整復師又はあん摩マッサージ指圧師の資格を有する者が機能訓練指導員となり、個々の状態に合ったリハビリテーションを行います。各施設1人以上の配置が義務付けられています。
⑦ケアマネジャー(介護支援専門員)
入居者の目標に沿ったケアプラン(介護サービス計画)を立案します。1人以上の配置が義務付けられています。
介護付有料老人ホームの入居費用について
入居費用には、契約時に払う入居一時金(初期費用)と月額費用があります。金額の大きさは、土地・建物等の不動産的要素や人員体制(人件費)でホームによって異なります。
月額費用には介護サービス費が含まれていますが、介護付き有料老人ホームの場合はこの部分が介護度別の定額になっています。定額のため、介護度が重くなっても月額の支払いの見通しが立てやすいメリットがあります。
逆に、それほど多くの介護サービスを必要としない方にとっては、サービス費用が高く感じる人もいるかもしれません。
介護付き有料老人ホームといえば高額な入居一時金を思い浮かべるかもしれません。しかし、現在は入居一時金がかからないホームや、複数の料金プランの中で月額費用を高く設定し、入居金0円プランを用意しているホームもあります。
介護付き有料老人ホームのメリットとデメリット
メリット
- 24時間体制で介護が受けられる
- 少なくとも日中は看護師が常駐
- 料金は介護度による定額制なので、費用の大きな変動がない
- 介護サービスを多く利用しても、介護度に変更がなければ費用は変わらない
デメリット
- 一日のスケジュールが決まっている場合が多いため、自宅と比べて制約が多いと感じることもある
- 希望があっても、デイサービスや訪問リハビリなどの在宅サービスは利用できない